自然豊かな大島をチョウの楽園に

美しいアサギマダラに魅せられて

  大島へは目井津港から市営旅客船「あけぼの3」に乗り15分ほどで渡ることができます。昭和30年代には約60世帯、360人ほどが住んでいましたが、過疎化により減少。2015年、最後の島民が島を離れ、住む人はいなくなりました。その後、寂しさを感じていた元島民たちが中心となって「大島プロジェクト会議」を結成。島づくりの一環として、チョウの保護活動を行っています。
 同会議がチョウに注目したのは、2019年、島を訪れた若松俊二会長の知人が島にアサギマダラが飛来することを知り、その知人から飛来数を増やしてみてはどうかと勧められたのがきっかけです。「それまでは意識したことのなかったアサギマダラの美しさに感動しました。」と若松さんは振り返ります。その知人からアサギマダラが吸蜜する花「フジバカマ」の苗を寄贈され、植栽しました。
 アサギマダラは体長10㎝ほどの大型で(あさ)()色をした(はね)の美しさが人気のチョウ。キジョランの葉に産卵し、フジバカマやシマフジバカマ等の花の蜜を吸います。生息には気温25℃程度が適温のため、季節によって長距離を移動するのが特徴で「旅するチョウ」と言われます。大島では4月頃に台湾や沖縄から飛来した個体が見られます。夏に本州などへ北上し、産卵して一生を終えますが10月中旬頃に再び、南下してきた新しい世代の個体が見られます。
 メンバーはもっとたくさんのアサギマダラを見たいとフジバカマとシマフジバカマの植栽を続けています。これまで約50本を植栽したところ飛来数が増え、今では1株に20~30頭が群れる光景も見ることができます。

ツマベニチョウとの競演も見られる

 9月から12月には日南市が分布の北限といわれるツマベニチョウも見られます。島に自生しているギョボクに産卵し、ハイビスカスを好んで吸蜜。メンバーはハイビスカスの植栽も行っています。「10月にはアサギマダラとツマベニチョウが一緒に飛ぶ姿も見られますよ。」と若松さん。

ありのままの自然を守っていく

 宮崎昆虫同好会の調査により、大島では約55種のチョウが見られることが分かっています。チョウはそれぞれ食草が異なるので、島の植物がそれだけ多様であることを意味しています。島の自然の豊かさに改めて気づかされたメンバーたち。ありのままの自然を生かした取り組みが島づくりにつながり、チョウの観察や観賞、ハイキングの目的で島を訪れる人が増えました。訪れた人が気持ちよく過ごせるように、島のシンボルである(くら)(さき)灯台周辺の草刈りやかつての生活道を遊歩道として整備する活動も行っています。  大島では一年を通してチョウを見ることができます。「島にはコテージがあり、宿泊もできます。チョウをきっかけに島が活性化することが目標。そのために自然を守り生かしていきたい。」と若松さんたちは、人とチョウが集う賑やかな島の将来を思い描いて活動しています。

ツマベニチョウ

素早い飛び方が特徴のツマベニチョウ。他にも多くのチョウが見られる。

自然豊かな大島をチョウの楽園に

元島民と大島が大好きなメンバー約50人が活動している。

自然豊かな大島をチョウの楽園に

フジバカマ、シマフジバカマなどの植栽を続けている。

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