土呂久の経験をアジアで活かす 砒素の苦しみから救うために
 公害訴訟の支援者たちは、最高裁での和解成立後、アジアに広がる砒素汚染に目を向けました。タイ、インド、内モンゴル、バングラデシュなど一部地域の住民に、土呂久と同じような砒素中毒の症状がみられたのです。原因は、砒素を含む地下水を飲んでいることにありました。そこで支援者たちは1994(平成6)年に「特定非営利活動法人アジア砒素ネットワーク(AAN)」を結成します。   バングラデシュに設立された砒素センター
広がる国際協力の輪
 1996(平成8)年、AANはバングラデシュのシャムタ村で深刻化している飲料水の砒素汚染を調査。すると、多くの井戸から高濃度の砒素が検出されたのです。そのためAANは、宮崎大学と共同で、代替水源や浄化装置の設置、検診、治療、啓発や栄養指導などを進めました。2013(平成25)年にはバングラデシュ南西部に「砒素センター」を建設し、土呂久との交流にも取り組んでいます。   井戸の調査に訪れたバングラデシュのチョウガチャ郡にて
県民理解を図るパネル展
 土呂久公害の教訓が世界で活かされる一方で、県民の認知度は十分ではない状況です。そこで県では、県庁や県立図書館等で土呂久のパネル展を開催。この公害を世に知らしめた元小学校教諭、齋藤正健氏の講演会も行い、土呂久への理解を深める活動を進めています。   パネル展
土呂久の教訓は次世代へ
 公害患者たちの思いを忘れず、教訓を次世代に引き継ぐために、主に大学生を対象として平成29年度はエコモニターツアーを、平成30年度はワークショップを(一社)全国モーターボート競走施行者協議会からの拠出金を活用して行いました。少子高齢化が進む土呂久。環境復元に取り組み、蘇った美しい土呂久を広く世界へ発信することも重要です。   エコモニターツアー
インタビュー_川原 一之さん
 AANの理事を務める川原一之さんは、土呂久の教訓を次世代に引き継ぐ取組の中で重要な存在です。土呂久との出会いは1971年。新聞記者として、公害告発の場に立ち会いました。その後、記者を辞め、土呂久公害をつぶさに調査して記録。被害者支援を続けながら著書を出版し、半生を土呂久と歩んでいます。 「2000年代に入ってからは、AANがJICAから委託を受ける形でバングラデシュでも活動してきました。ところが一昨年、帰国前日に病気が発覚。現地の病院で手術を受け、命拾いしました。『もっと土呂久のために働きなさい』と土呂久の神様から言われているのかもしれませんね」と、川原さんは笑います。 いまは環境教育活動などを進めながら、1970年代当時の貴重な音声をデジタル化している川原さん。2019年からは学習教材にも使えるような原稿執筆も始めました。「美しい渓谷の景色と、そこで暮らす人たちに接して、環境の大切さを実感してほしい」。ぜひ現地で、土呂久からのメッセージを受け止めたいものです。               
    

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